『寝ても覚めても』の初日上映に行って参りましたので、パンフやユリイカを読む前に感想文をちょこっと。(ご覧になる予定の方やご興味がある方は、ここから下は読まないで、お近くの上映館へどうぞ!)
濱口竜介監督の前作、『ハッピーアワー』(を好き過ぎて)の後遺症なのかもしれないけれど、私には前作ほどは刺さらなかった。
なぜ刺さらないのか決定的な理由はない気がするが、独断と偏見でポツポツと書きます。
映画の話は絶望的で、その絶望こそがこの世で生きるということなのだけれど、スクリーンの中はあまりにも淡々としていたのだ。主人公である朝子の行動は、さほどショッキングなことではなく、秘める想いや矛盾を隠しておけない女性であればごく自然な選択だったように思う。そのプロセスがいまひとつ追えなかったというか、プツプツと途切れていて、思い入れるには何かが足りなかったのだ。「捉え方は人それぞれ。ご覧になった皆様に委ねます」という風に私は受けとったのだが、出来ればもっと中の世界を背負って欲しかった。創りあげていく上で生まれたエッセンスをこちら側に突きつけて欲しかった。良くも悪くもふんわりしていて口当たりが良く、それがメジャーになったということなのかなあとか余計なことまで考えた。監督をはじめとするこの映画に関わる方たちのチームワークの良さが【絶望】に侵食してくるのは、なんだか皮肉なことだ。
雨、海、川。水の映像が、すべてとても美しかった。
役者の方の演技が素晴らしく、とくに主演の女の子の眼差しが良かった。
tofubeats氏の劇伴はとても良かった。美しく緊迫しており、この劇伴でなければもっとふんわりぼやけていたと思う。エンディングの曲はもちろん良いけれど、シーンとした風景に入る音が心に残った。
こちらのMVは、森祐樹監督。