ゴールデンウィークになると昔のことを思い出します。毎年この時期は横浜に帰っていたからでしょうか。今年からはもう帰るお家がありませんので、ひときわ懐かしい気持ちがします。
今日も思い出したことがありました。パンのお話を書きます。
二人暮らしになってからの母は猛烈な教育ママに変身しました。私たちの住んでいる団地は低所得者層が大勢住むかなり荒れた地域だったのですが、それを脱すべく母なりに計画を立てたようです。どこからか情報を仕入れてきて、当時としてはまだ珍しい中学受験の塾に私を入れることにしたのです。そこは日本能率研究会という妙な名前の進学塾で、通う時はみんなで同じブルーのカバンを持つのです。
ある日いきなり模擬試験を受けに行くことになりました。会場は横浜の菊名校舎で、線路のすぐそばにありボロくて狭くて薄暗〜い教室でした。あらかじめ試験は長時間かかると聞いていた母は、会場に向かう途中で、ガラス張りの小さなパン屋さんに入っていきました。そこで私は生まれて初めてトングとパンを乗せるプレートを見たのです。こんな買い方があるんだ!とものすごく驚いたのをおぼえています。さらに驚いたのがパンの味でした。試験の合間にこっそりと食べたのですが、サクサクに焼かれたミートパイはこの世の食べ物とは思えないほど美味しかったのです。
試験の結果は、全国で100番ちょっとの成績となりました。再び訪れた時に母は職員から「塾に行かせてないのにこの成績は素晴らしい。頑張れば良いところへ行けますよ」とおだてられたのです。そのせいで数年間二俣川の日能研に通うことになったのですが、、、それは本当に真っ暗な時代でした。