パンのお話、ふたつめです。
私は横浜の外れで思春期を過ごしたのですが、渋谷や原宿まで出かけるにはいくつか乗り換えなければなりませんでした。まずはバスで鶴ヶ峰駅、相鉄線各駅停車で横浜駅へ、東急東横線に乗り換えてようやく渋谷。急行だってそんなに早くないし、、、着いた途端に帰りのバスの心配をしなければならなかったので、さらに遠い原宿へ行けたのは高校に入ってからでした。雑誌で原宿の特集があると必ず買っていた私は、たくさんの情報を集めていました。セントラルアパート。レオン。マドモアゼル・ノンノン。バラだらけのお店(店名わからず)。そして同潤会アパート。特に表参道に対する憧れはすごくって、「初めての時はどういう風に歩こうか」って、仲良しの友達と何度も話し合っていました。
そしてついにその日が来たのです。事前に友達と打ち合わせしたのは、せっかく表参道を歩くんだから、焼きたての長いフランスパンをかじりながら歩いた方がいいということになったのです。焼きたてたって原宿のパン屋さんなんか知りませんから、途中、横浜駅で長いフランスパンを買って、袋を抱えて原宿まで行ったのです。そしてフランスパンをかじりながらひたすら表参道を往復したのですが、、、焼きたてじゃないしおなかはいっぱいになるしで、「もうパン持ってこなくてもいいかもね」ってなったのです。
今でも私はフランスパンが大好きで、特に細くて固いパンの中にミルククリームが入ってるものが一番好きです。最後の晩餐には、ぜひあれを食べようと思っています。